一杯のコーヒー マヌケなヒーロー達R
そしてブリッランテジェネティカ・チャイルドの誕生は、その後何度も改正されることになる法律で禁じられた。
とはいえ、最初に出された法律は酷いもんだった。
『遺伝子操作された受精卵が、そもそもの諸悪の根源』
てなもんだったからだ。
それが受精卵の時点でそもそも個人の意思があるのか、でかなりのつっこみがあちこちから入り。
『いかなる理由があれ、受精卵に遺伝子操作を施すこと。ブリッランテジェネティカ・チャイルドの誕生は、法ですべて禁止する』
と最終的になっていったが。
『わが子をブリッランテジェネティカ・チャイルドの作成した、その親の法的責任はないとする』
なんて意味不明な法文がついており、つまり抜け道は堂々と残してあったのだ。
表立ってブリッランテジェネティカ・チャイルドは誕生していないことになっていたが、裏ではひそかに新しい子ども達は多くまだ生まれていた。
それは優れたわが子を持つ親、というステータスが欲しい人間はごまんといたからだ。
しかももしわが子が新しき子だとばれても、子どもが収容所送りになって、待つのは死ばかりと知っていても。
法律がザルだから、自分達には決して火の粉がかからないから、もっとも無責任な親も多かった。
しかし”Escape to freedom”に助けを求め、わが子と共にネザエイシュアンを逃げ出した親も、多数いたのは事実だった。
彼等はこの星を根底から変えようという思いで、わが子達をそれを変えられるだけの能力を付与することを選んだ。
ただあまりにも、それは早すぎたのかも知れない。
ブリッランテジェネティカ・チャイルド。
遺伝子操作で生まれながらに優れた新しき子、その存在がネザエイシュアンにもたらしたモノ。
それはごく普通にいる、生まれながらなにかに優れた才能や能力を持つ人々への迫害だった。
例えばスポーツ。
足が速いランナーが2人いて、ライバル同士かつ片方が片方よりさらに速かったとする。
『あいつはブリッランテジェネティカ・チャイルドです。間違いありません』
やや劣る方が自分より早い相手を、当局に名指しで告発する。
それだけで自分のライバルはなんの調べもされず、強制収容所送りになる。
1人がこれをしたら自分もとスポーツだけじゃなく、ありとあらゆる場所で自分より優れた者を告発、強制収容所送りにした。
幼稚園のわが子より足がたまたま数秒速かった、それだけの理由で相手の子どもを収容所送りにした親もいた。
ホントひどい話だと赤ん坊がハイハイした、それをわが子よりも先に越されたので、頭に来て告発したなんていうのもある。
ある意味、この星の住民特有の優秀な民族であるというプライドが、どれだけ根深く病んでいるのか、それを惑星の内外へ知らしめていた。
んで、強制収容所送りにされた人々を”Escape to freedom”が救助し、サルバシオン太陽系に連れてくる。
それによりサルバシオン太陽系に優秀な人材、頭脳集団が流れ込んでくることになったわけで、ありとあらゆる技術などが格段に向上した。
ちょっと前までワープ航法も長距離は3回ぐらいに分けてジャンプしていたのが、1度で長距離ジャンプができるようになったり。
セーフティネットと呼ばれる、元々はシオン様とルーキス様が思念の形で星を包んだ守りを、科学的に確立させる方法を確立させることが出来たり。
パトレイバーやガンダム、ダグラムとかナイトメアフレーム。
まあなんでもいいがそれらも見ていたのだろうな、マがつくサイエンティストの皆様が。
彼等と共に開発者達は最初は無骨だった人型高機動兵器・シュッツヴァルト(防風林の意)を、改良を重ねながらエヴァンゲリオンみたいな滑らかな姿に作り上げた。
これはマがつくサイエンティストの皆様が多く住むエイシスと、各艦隊に実戦配備されている。
ちなみにマがつくサイエンティストは日夜シュッツヴァルトを用い、皆様に愛される為のお馬鹿な行動をしている。
例えるなら、たまたま渋滞した道路から幼稚園バスエレカをシュッツヴァルト2体で持ち上げ、いかに周囲を傷つけず、いかに早く運ぶかやってみたり。
あるいはシュッツヴァルトでバスエレカとかを止め、眠そうな乗客達に「高原の涼しい風」を送風してみたり。
昔俺が生まれる前、なんと「ぷにぷに病ウイルス」「お目々キラキラ病ウイルス」を2世代前のシュッツヴァルトで巻いてみたり。
ちなみに「ぷにぷに病」は老若男女、大人も子どもも罹ればほっぺが誰もが思わず触りたくなるぐらい、ぷにぷにになる一過性の病気だ。
あと「お目々キラキラ病」も同じくで、これは強面の人でもお目々が少女漫画のような目になる、やっぱり一過性の病気だ。
よそから旅行でサルバシオン太陽系に来る人の中には、わざわざこの病気に罹りたいが為に〜という人もいるぐらい受けがいい。
実際、ワクチンとかいまだに誰も開発もしていないから、この病気の変な人気の高さが伺える。
まあ・・・。
爆弾岩もどきな宇宙人のクラスメイトがこの病気に罹ったとき、俺たちはスリルと萌えを覚えながらめちゃくちゃ触ったもんだ。
でまあ、話がそれたが。
気がつきゃサルバシオン太陽系は最強の力と知恵を持つと言われるようになり、その分他の星系からは調停者と保護者の役割を求められるようになった。
そしてネザエイシュアンはというと。
某ドラえもんののび太が一度はやったのと同じ、とにかく気に入らない相手を放逐する現象が、星系内で大流行したせいで。
ものすごい人口が消失し、少子化に陥ってしまった。
それであらゆる星系へ、特にサルバシオン太陽系へ、ネザエイシュアンの民は母星へ帰れと緊急の呼びかけを行った。
だが、帰る者なんかまったくいなかった。
前にも言ったとおり、ネザエイシュアンこの頃かなり薄れていたとはいえ、純血主義は根強く残っていた。
他の星でネザエイシュアンの民同士が一緒になった場合でも、そうじゃない道を選んだ民にしても、ネザエイシュアンに暮らす者達がそう易々と受け入れるか。
政府は母星に帰れと何度も声明を出したが、アディリシア姫はそれに対し、ネザエイシュアンから来た民へ帰れとは言わなかった。
『命からがら逃れてきたかの民を、そなたらはまた命からがらの目に遭わさないという保証がない』
それがあの御方の答えだった。
確かにブリッランテジェネティカ・チャイルドは帰れば生命の保証が無く、でっち上げの理由で放逐された民も生命の保証はないと見る方がいい。
またキルレシアンや他の星系の目も厳しく光り、元ネザエイシュアンの民を誘拐することも出来なかった。
それで権力者達は考えた。
政権を一つ無理矢理トップの首をすげ替えまでし、今いる民に生めよ増やせよ、放逐させるなと奨励した。
それだけじゃなく、一部ではクローン人間を多く誕生させ、コンピューターで選んだ里親に託し育てさせたという噂もあった。
とにかくそれらの努力のかいもあり、ネザエイシュアンの人口は増加に転じたが、そうなると安心するせいかまたいらぬ争いを始めた。
「あいつはブリッランテジェネティカ・チャイルドだ!」
「いや、こいつがそうだ!」
「あの野郎は絶対にそうだ!」
そしてまた同じことの繰り返しだ。
ところがある時、政府は自分達のJUSTICEを振るうにはもってこいの相手を見つけた。
それが後述するが、ナザレクスンだった。
『ナザレクスン解放戦線』
そう名付けた戦争をネザエイシュアンの政府、軍部はナザレクスンに吹っかけた。
相手は人工知能シェラルリータ、所詮は機械と侮り、楽勝だと思っていたネザエイシュアンの政府と軍部。
ところが相手は一筋縄じゃ行かないぐらい悪知恵に長け、ある意味なによりも手強い相手だったのだ。
おまけにナザレクスンのこのワガママな女神は基本が機械だけあり、特殊なシールドを施していない機械を乗っ取る技能を持っていた。
ちなみにサルバシオン太陽系宇宙警察連合に属するすべての艦には、対シェラルリータの特殊な防御シールドが施されている。
だから最初は有利に思えたネザエイシュアンの軍は、すぐにシェラルリータに完敗し敗走した。
逃げ切れればまだまし、しかしナザレクスンの軍に捕まれば・・・・。
しかしその恐ろしい事実を政府も軍上層部も知っても、なお進軍を止めなかった。
彼等のJUSTICEには逃げ帰る、相手への負けを認めるなんてものはない。
結局、前線に出る兵士等の生命がいくら消耗されようとも、前線とはほど遠い場所にいる彼等にはそれは自分達には関係のない話だ。
だが、自分の死んだと思っていた家族が本当はどうなったのかが、ある報道カメラマンの手により明白になった。
政府と軍上層部はシェラルリータの非道さをアピールしたが、自分の愛しい家族の姿を見つけた者の口からは悲鳴と絶叫があふれ出た。
そしてネザエイシュアン中に反戦、戦争集結を叫ぶ声があふれた。
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